
OZZY OSBOURNE / BLIZZARD OF OZZ - UNRELEASED DEMO TRACKS[1CD]
SATANS'S CALL / SCCD-001
01 I Don't Know
02 Crazy Train
03 Goodbye To Romance
04 Suicide Solution
05 Mr. Crowley
06 No Bone Movies
07 Revelation (Mother Earth)
08 Steal Away (The Night)
09 You Looking At Me Looking At You
10 Randy Rhoads Interview
タイトルには“デモ音源”とあるのですが、果たしてこれをそう呼んでいいものなのかどうなのか……。一般に“デモ音源(=デモンストレーション音源)”と称されるものには
(1)オフィシャル・テイクをレコーディングする上での下敷きとなった、それとはまったくの別音源。バンドメンバーに聴かせ理解してもらうために録られた個人的なテイクや、プリプロダクション時の試験的なテイクなど。
(2)レコーディング途上で記録された、未完成なオフィシャル・テイク。あるいはその部分的な習作。バックトラックは完成していて、仮のギターソロを乗せてみている段階のテイクなど。
(3)レコーディング終了後ミックスダウン時に記録された、仮ミックス音源や極端なミキシング音源などのオフィシャル・テイク別ミックス。ただし、リリース・テイクを使用し、波形処理ソフトなどで後から意図的にミックスを操作したフェイク音源の場合も。
などがあると思うのですが、デモンストレーションという言葉が本来持つ“(販売などを)促進するための実演・試演”という意味に照らし合わせて考えれば、(1)の“お試しテイク”のみがそう呼ばれていいように感じるんですよね。(2)や(3)はいずれも“制作中”に生まれるモノなので、“ワーキング音源”などと称する方が理に適っているように思います。
さて、それを踏まえてこの『BLIZZARD OF OZZ - UNRELEASED DEMO TRACKS』を聴いてみると、全編オジーのヴォーカルは微かに聞こえる程度のオフ状態、ベースに至ってはまるでいないかのようであり、やや遠慮気味のドラムスを従えて、頭からお尻までランディのギター(主にサイドギター)だけが暴れ回っています。おお、こんなテイクは聴いたことがないぞ……しかしながら完成版の『BLIZZARD OF OZZ』と演っていることは何ら変わりがないようなので、これはやはりデモではなく(3)の“極端なミキシング音源”ととらえるべきでしょう。
もちろん、だからと言って面白さが半減したりするはずもなく、剥き身にされたギターサウンドが新鮮に響いてうれしいったらありません。中でも“Goodbye To Romance”のリリカルなバッキングには本気で感涙させられます。サイドギターが中心なのでギターソロはうしろで小さく鳴っているだけの曲がほとんどですが(例外もあり)、サイドパートに振り分けられていたらしきオブリガードは見事に健在、“Crazy Train”や“Mr. Crowley”“You Looking At Me Looking At You”で隙き間を突いて飛び出してくる魅惑的なフレーズの数々にもうウットリです。“You Looking At Me Looking At You”でのミュートを効かせたアルペジオなど、メインのソロが引っ込んでいるお陰でバッキングの妙味を楽しめる曲も多く、ランディ好きにはたまらない逸品となりました。
オフィシャル盤どおりの曲順なのに“Revelation (Mother Earth)”と“Steal Away (The Night)”の間にブランクがある、ギュルギュルというノイズがうっすらと全編に混入している(“No Bone Movies”と“You Looking At Me Looking At You”で顕著)、といった残念ポイントもありますが、音源の貴重さを考えたらまるで気になりません。そりゃまぁ(3)なんですから当然「誰かが捏造したんじゃないの?」という疑念もついて廻りますが、例えばセンターキャンセル(音像の中心にある音を消してしまう機能)を使ってもここまで綺麗にギターのみを前面に出すことはできないでしょう(最新鋭の波形処理ソフトの実力は知らず)。いやもうこの際、捏造なら捏造でもいいんです。だってもし自分にミックス前の『BLIZZARD OF OZZ』テープが与えられて、「好きなようにミックスしていいよ」って言われたとしても、作るのは結局どうせコレと大差ない“ランディ中心ミックス”なんですから。その夢が叶ったと思えば捏造だって全然オッケーです(笑)。
ほぼ同時期に『BLIZZARD OF OZZ WORKING TRACKS』[写真下↓] という、本作とまったく同内容であろうと思われる別タイトルもリリースされています(ダブりそうなので未聴)。この2枚、なぜか売価に1,000円近い開きがあるんですよね。本作の方が安いのでこちらを選んだのですが、高い分向こうの方が音が良かったりしたら悔しいですなあ。でも『BLIZZARD OF OZZ WORKING TRACKS』がレーベル名すら無いのに対して、堂々と“Mr. Crowley”の一節“Waiting on satan's call”から取った“SATAN'S CALL”を名乗っている分だけ、本作の方が「志が高い」と言えるでしょう。もっとも性質的に“DEMO TRACKS”よりも的確な“WORKING TRACKS”をタイトルとしている手前、向こうの方が「背筋のピンと伸びた商品だ」と言えなくもないんですけどね。
【SBD音質:★★★★】
【アートワーク:★★★★】